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医療概論

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    今年2月、日本経済新聞にて次の見出しの記事が掲載されました。
    “薬効かない菌、世界で急拡大 英予測「50年に1000万人死亡」”
    記事によると、抗生物質など薬の効かない薬剤耐性菌が非常に増加しており、耐性菌による年間死者数は全世界で推定70万人にのぼるそうです。それが2050年にはアジアを中心として約1000万人になると予測されています。

    現在、医療現場を中心とした抗生物質の過度の使用を背景として、薬剤耐性菌が氾濫しているといわれています。以前から度々、医療現場におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)や、多剤耐性緑膿菌などが話題に取り上げられることがありました。生物の体は、非常に高度にできています。そのため、抗生物質を長期間使用した場合、その薬剤に対する耐性を持った菌が突然変異により生じます。また、耐性菌以外の菌は抗生物質により排他されるため、更に耐性菌が繁栄するのです。そして多種類の抗生剤使用を繰り返す内に、どんな抗生物質も歯が立たない恐るべき菌が作り上げられてしまいます。これを懸念したWHO(世界保健機関)は、抗生物質の処方を最小限に抑えるよう医療従事者に勧告しています。これは世界規模の話であり、一見すると私達には直接の関係が無い様に思われがちです。

    しかし、思い巡らすとこの様な事柄は抗生剤に限られたことではありません。
    例えば、動物病院で一般的に使用されるフィラリアの予防薬を考えてみましょう。当院でなぜ内服の予防薬が使用されているかご存知でしょうか。犬の性格によっては、内服薬を飲ませることが容易な場合ばかりではありません。
    背中に薬を塗布するスポットタイプの薬も存在します。しかし予防薬を背中に塗布した場合、室内の環境汚染を引き起こし、犬に触れる人間の手からも薬剤が吸収されてしまいます。それらの薬剤は動物に対する急性毒性試験は行われていますが、人間に対する安全性が証明されている訳ではありません。(注射薬は動物に対する安全性から論外です。)
    また現在では、動物病院においても多種類の抗癌剤が人間と同様に使用される機会があります。これらの抗癌剤は尿などから体外へ排泄されるため、飼い主である人間まで暴露されることになります。抗癌剤には発癌性があり、健康な細胞にも影響を与えるリスクが伴います。

    医療が進歩した現在、あらゆる病気に対して様々な薬が凌ぎをけずって開発され、昔では為す術の無かった病気に対して何らかの手をうつことができるようになりました。しかし、必ずしも良い面ばかりではありません。
    医療現場において、一見完全に見える治療も実はどこかで別の作用を引き起こし、その結果当初よりも恐ろしい影響を及ぼすことがあります。全てを一刀両断に肯定もしくは否定することはできません。しかし私達が動物達の治療を行う場合、単に動物の治療をするだけではなく、その治療にあたり一緒に生活するご家族の健康も同時に守る責任を負っていると考えます。

    全ての動物医療は動物達とその家族のために

    私達スタッフ一同の願いです。
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    昨年の菊池寛賞受賞書籍に慶応大学医学部専任講師、近藤誠氏の「医者に殺されない47の心得」があります。元々は抗癌剤の無効性を訴えていた著者ですが、CT検査1回でも発癌リスク有り、1度に3種類以上の薬を出す医者を信用するな等々、47の心得が書かれています。近藤氏の主張には賛否両論あると思いますが、最先端・高度医療の名の下にヒト医学の後追いをして来た動物医療の世界ではどうなのでしょうか。
    私の経験から言うと、現在行われている最先端と称する獣医療は、必ずしも動物達とその家族にとって最善の治療とは限らないということです。
    現時点で、私が疑問に感じ、実際に行わない治療は大きなもので3つあります。

    ●抗癌剤投与(リンパ腫の治療を除く)
    当院で癌と診断された過去10年間の抗癌剤無投与群525例の調査を行いました。全症例で抗癌剤を使用しないことによりバイアスを排除した結果、多くの場合動物達の中央生存期間は従来の抗癌剤無投与群の報告より長く、様々なリスクを勘案すると抗癌剤投与の必然性に疑問が投げかけられました*1。残念ながら、寿命の長いヒトと異なりイヌ・ネコ達の場合は抗癌剤投与のメリットはありません。ましてや、免疫療法、高濃度ビタミンC療法等に至ってはオカルトの類と考えられます。
    ●椎間板ヘルニア手術
    依然として獣医学領域では先端医療の一つとして謳われていますが、既にヒト医学部の講義では手術は副作用に見合うメリットが少ないとされ、手術は以前ほど行われなくなりました。
    一部を除いて手術の有無は予後(結果)に影響しません。手術で治る動物は内科療法でも回復し、内科療法で治らない動物は外科手術でも効果は見込めません。実際、今年2月のセミナーにおいて手術のエビデンス(有効性の証明)はないとされました*2。手術をしない以上、全身麻酔を必要とするCT、MRI検査は慎重に行う必要があります

    ●白内障手術時の眼内レンズ
    HP上では眼内レンズが視覚の改善に必須かのように記載されているのを散見しますが、イヌの神経系はヒトに比べて粗であるためにレンズを入れても宝の持ち腐れとの意見もあります。実際当院で手術をした動物達ではレンズの有無によるQOL(Quality Of Life)の差は認められませんでした。
    本を読んだりテレビを見たりするヒトではメリットが大きい眼内レンズですが、ブドウ膜炎、レンズの白濁化等のリスクを考えると動物の場合にはメリットは少ないのではないでしょうか。
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    当初は動物達のために必要とされた高度医療ですが、近年の行き過ぎた状況には違和感を感じます。ネット上には様々な情報が溢れていますが、病気の説明はともかく、その治療方法は動物の場合にエビデンスがないものがほとんどであり、お医者さんごっこの域を出ません。私達獣医師は症状が出ている動物達に、科学的に有効性が認められている治療をするべきであり、動物達にとって苦痛を与えるだけの効果の見込めない治療よりも、QOLを守る治療をすること、明るく楽しく豊かに生活できる治療をすることが動物達とそのご家族にとって最善の治療と考えます。

    それ故、当院の治療方針は単純明快です。すなわち私の飼っている動物達と同じ 治療を皆様の動物達にすることこそが、当院スタッフの使命と考えます。

    全ての動物医療は動物達とそのご家族の為に。

    本原稿は2014年3月の段階での医療情報を元に作成しています。

    *1 動物臨床医学会 2013.11月 一般講演 村田獣医師etc
    *2 第139回JAHA国際セミナー 神経外科 Dr.Nicholas Jeffery
                          (Iowa State University)

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    今年2月、全国紙に『後発薬、相次ぐ製造中止、業界普及へ品質管理強化』の記事が掲載されました。厚生労働省は増え続ける国民医療費を抑制する目的で、後発薬いわゆるジェネリックの利用を推進してきましたが、問題点も浮き彫りになってきました。コスト削減のかわりに品質、供給、サポートに不備が多いのです。

    動物薬の世界はどうなのでしょうか。動物薬の場合にもジェネリックはいくつか発売されていますが、代表的なものにフィラリア予防薬があります。パテントが切れた段階で数多くの会社が価格の安さを武器に参入してきました。人体薬のように国による公定価格があるわけではないため、中には先発薬に比べ病院納入価が10分の1以下という薬まで現れてきました。言うまでもなくジェネリックは安さが命です。後発薬は原薬メーカーから薬を仕入れた上で独自にコストを削減して作られます。その目的を果たすために、カプセル・基剤等の材料は極力安いモノを使い、人件費も削減しながら1円でも安い薬を作り沢山売ることを理念として作り続けます。後発薬は規定の原薬が入っている最低限の仕様は満たすものの、その吸収性、薬効までを保障するものではありません。薬事情報が提供されないばかりか、副作用発生時の対応も期待出来ません。これが一般消耗品で買い直せばいいものなら安物で十分かもしれません。しかし、その結果が動物達の命に直結するものであるとするならば・・・。

    私にとって薬剤選択の優先順位は
    1.確実な薬効
    2.安全であること
    3.安定的に供給されること
    4.情報提供が的確になされること
    5.副作用発生時の確実な対応が約束されること
    等々ですが、動物薬のジェネリックの場合には現時点ではいずれも不安を感じるのが現状です。そもそも、後発薬がそれ程素晴らしいものなら、先発薬自体が存続することは不可能なはずです。

    長く続いたデフレ経済によって、安さが全て、安い程良いという風潮が蔓延ってしまいました。しかし、大切なことはその価格に見合った価値があるのか、ではないでしょうか。もちろん高い薬が良いわけではなく、中には高いだけというものもあるので注意が必要です。たとえ目先飼い主様にとってご負担となり耳の痛い話であっても、数多くの情報の中から動物達とそのご家族にとって、最善の治療をしていくことが私達獣医師の責務と考えます。そしてその最善とは私と暮らす動物達が受ける治療と同じものでなくてはなりません。

    アベノミクスで世の中も明るくなりつつあります。当院スタッフ一同、動物達と明るく楽しく豊かに暮らしていける、そんな社会の実現のために今後も治療を通じて貢献していきたいと思います。

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    今年1月、日本老医学会により終末期における胃瘻チューブ*や人工呼吸器の装着は、慎重に検討された上で差し控えや中止も選択肢とされるべきとの報道がありました。医学の進歩により、「生物」として生かすことが出来るようになった一方で、医療として考えた場合、「人」として生きているのかが問題となってきたのです。とはいえ実際本人の希望がわからない場合、家族がどのような選択をするかを決めるにはかなりの困難・葛藤が予想されます。

    意思表示が出来ないという点で動物医療にも相通じるものがあります。動物たちの希望を聞くことが出来ない以上、ヒトが治療方針を決めるほかありません。特に動物が高齢の場合、延命治療とQOL(quality of life)とのバランスが問題となることが多々あります。このような場合、私は「もし自分がその状況であったならどのような選択をするのか」、を基準に治療方針を決めることをお話しています。

    仮に自分自身が病気になった場合(このようなことがあったら困りますが)、手術を選択するのか、しないのか、抗癌剤治療をするのか、しないのか等々、その治療を受けるのかを考えてみては如何でしょうか。

    選択肢は様々ですが、高齢動物の場合には、必ずしも高度医療が最善の医療とは限りません。この場合の最善の医療とはQOLの改善が第1ではないでしょうか。

    獣医学が科学の一端である以上、その決定においてエビデンス**が求められるのは言うまでもありません。しかし治療の選択においては、動物たちとそのご家族にとっての最善が何か、ということが大切と考えます。

    「最善の医療」というのはとらえる角度により異なるため、その答えは必ずしも一つではないかもしれません。治療にあたって私達が大切にしていることは、人が動物たちと暮らすのは明るく楽しく豊かに生活するためである、ということです。この気持ちを忘れることなくスタッフ一同、今後も価値ある医療で皆様の信頼にお応えしていきたいと思います。

    *胃瘻チューブ・・・

    食べることが出来ない時、胃にチューブを挿入し栄養を補給すること。合併症がなければ全く自分で食べることが出来なくても何年でも生かすことが出来る。

    **エビデンス・・・ 統計学的に治療の有効性が証明されていること。

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    東北地方の太平洋沖で発生したM9.0の巨大地震。大津波で壊滅の町、放射能をまき散らす原発を、私共の目にはっきりと焼き付けてくれました。発災から1ヶ月半、被災地の皆さん、ようやく春は訪れようとしています。頑張りましょう!

    福島の第1原子力発電所の事故は甚大な被害をもたらし、この原稿を書いている段階で未だ収束に至っていません。チェルノブイリ級レベル7の事故により大量に拡散した放射性物質(プルトニウムは2万4000年が半減期!!)により、長期に渡り被害が拡大する恐れがあります。詳しい原因究明は今後の調査が必要ですが、数多くの教訓を残しました。

    今回優先すべきは人、社会、環境だったのですが、原子炉を守るという経済的な理由が優先してしまったようです。管理能力に乏しい政権であったために、指揮系統が混乱、原子力先進国である米国の協力も断ってしまいました。そのため対応は後手後手になり原発は爆発、事態は取り返しのつかない状態になってしまいました。
    また、関係者は津波が想定外であったことを理由にしていますが、複数の地震学者が過去の大津波の発生を報告し、電源喪失の危険性についても国会で問題とされていました。

    経済的な理由から、様々なリスクを自分達の都合のいいように解釈したことが事故の本質なのではないでしょうか。また、トラブル発生後も「最悪を想定」した対策を取っていれば今回の惨状には陥りませんでした。作業を同時並行で進めていれば、放射性物質の海洋投棄という異常事態を招くこともなかったでしょう。安価でクリーンとされていた原子力発電ですが、結果として日本人はそれ以上の代償を払うことになりそうです。

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    スケールは随分と異なりますが、動物医療にも同じ事が言えます。

    1.命を助けること
    2.生命の質を維持すること
    3. 皆様の笑顔につながること

    これらの目的を明確にして治療を進めていかないと、本末転倒になりかねません。病気が自分の範疇を超えた場合には、速やかに対応可能な医療機関に依頼することも必要です。
    また、Dog year(犬の1年は人の7年)と言われるように、動物は時間の経過が早いためヒトに比べて急速に病状が悪化します。1度進行した身体のダメージを回復させるのは、大変なばかりか手遅れになりかねません。

    それ故、医療においては初期の段階で希望的観測をすることなく様々な想定をし、Priceless*なものを優先することが最善の選択であり、結果として回復も早くなります。

    私達スタッフ一同、今度も基本方針を変えることなく、皆様のご期待にお応えしていきたいと思います。

    被災した動物たちの里親になって頂ける方を募集しております。
    ご協力頂ける方は当院スタッフまでお申し出下さい。

    *ブラック・スワン・・・・

    昔西洋では白鳥と言えば白いものと決まっていたが、オーストラリア大陸発見により黒い白鳥が発見され、常識が覆ってしまった。ほとんどありえない事象、誰も予想しなかった事象の意味。

    *Priceless・・・・・・・・ 値段が付けられないほど価値がある物、の意。

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    昨今、最先端医療が様々なメディアに登場することが多くなり、皆様も見聞する機会があるかと思います。医学の進歩には目覚ましいものがあり、10年前には最先端とされたCT、MRI更にはPET*までが一般的なものとなってきました。最近では、クローン、再生医療、遺伝子治療等々、今までSFの世界の話が現実の治療として登場します。早晩動物にもこれらの医療技術が使われるようになると思われますが、動物医療の目的とは何でしょうか。

    確かに動物医療は今まで人の医学進歩の恩恵を受けてきました。血液検査、点滴、レントゲン、超音波、内視鏡、レーザーメス、白内障手術等々、当院で行われている全ての治療は医学の進歩なくしては不可能なものばかりで、救われた動物たちもたくさんいます。

    しかし、現在登場する動物の高度医療の中には、治療成績の点からも行き過ぎの感が否めないものが少なからず存在します。人で行われている高度医療を動物たちに実施するだけならば、今日にでもそれは可能でしょう。しかし、寿命が限られた動物たちにとってそれらの治療が、「動物たちとその家族を幸せにするのか。」を私たちはよく考える必要があるのではないでしょうか。

    *PET・・・

    「陽電子放射断層撮影」という意味で、ポジトロン・エミッション・トモグラフィー(Positron Emission Tomography)の略。

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    最近では動物の治療に最先端高度医療がTVで紹介されるようになってきました。その内容たるものやヒト顔負けで、CT、MRIから始まって放射線療法までが街の開業医で行われているようです。しかし、それらの医療でどれだけの動物たち(飼い主様)が救われているのでしょうか。これらの高度な医療が動物の「生命の質」に貢献しているのかまだよく分かっておりません。

    私が獣医師を目指した20年前、確かに街の動物病院ではレントゲンもなく科学的な治療と言える代物ではなかったようです。動物を治療する上である程度の設備は欠かすことが出来ません。しかし物事には限度というものがあります。

    私たちが動物を飼育するのは、動物と楽しく暮らすためです。治療が飼い主と動物にとって苦痛だとしたら・・・。最悪の場合には治療によって寿命を縮めている可能性もあります。エビデンスがない(科学的に証明がされていない)高度最先端医療は、実験的な治療として大学病院のような公的な施設で研究として行うべき治療と考えます。

    一般的に動物の寿命は10~12年です。その間、元気に私たちと過ごすことが出来ればそれで充分ではないでしょうか。そしてそこから先の時間は神様(私は無神論者ですが)が与えてくれた時間として感謝し、動物と楽しく過ごされたらいかがでしょうか。医療と動物医療は似て異なるものです。動物医療はあくまでも私たちヒトの幸せの上に成り立っているものと考えます。現在の行き過ぎた高度医療には1人の愛犬家として違和感を感じます。獣医師には最先端医療に走るのみではなく客観的な最善の方法を提示する責任があると考えます。